龍と愛美が結ばれる事が目的の、同好会の活動が毎日あった。
愛美が龍の誘いにOKサインを出したのは初めてで、本来ならそれは喜ばしい事。
…だが、俺は素直に喜べていなかった。よくわからない感情が、俺に付きまとっている。
時計を見ると、11時半になろうとしている。龍じゃないが俺も考えてる事があるせいで、時間が進むのが早い気がする。
「…ふぅ」
龍が帰ってきた。表情を見るとさっきより少し落ち着いたのがわかった。トイレが長かったのはおそらく中でシミュレーションしてたんだろう。
席に腰を下ろす。座った瞬間またコップに手が延びた。
──龍…
龍が愛美と付き合うために、今まで同好会を活動してきた。
それがやっと実を結ぶかも知れないんだ。
それは嬉しい事。
…嬉しい事のはずなんだけど…──
水を飲む龍が視界の中心に入る。
──それが素直に喜べないのはなんでなんだ…?
「…ん?なんだよ?」
俺の視線に気付いたのか、龍が聞いてくる。
その言葉で、俺はハッと我に還った。
「…いや!何でもない」
慌てて返答する。一息置いて龍はまた水を飲んでいた。
…俺がこんな思いでいるなんて、龍は思ってもみないだろうなぁ。
また窓の外に顔を向け、横目で龍を見ていた。