どこまでも続く深い青空は、夏になったのだということを教えてくれるようだった。
一羽のスズメが気持ち良さそうに空を飛んでいる。
窓からそれを眺めていると、ズズズ…と音がした。
龍が水を飲み干したらしい。その音はもう何回目かわからないくらいだ。
飲み干したというのに口をストローから離さない。呆けたように前方を見続ける龍。
「…龍。水、無くなってるぞ」
俺の言葉に龍はハッとしてストローを口から離した。
「…ちょっとおかわりついでにトイレ行ってくるわ…」
そういって席を立つ龍。俺はそれを横目に見ながら、自分の水を飲んだ。
…テストが終わって最初の日曜。午前11時過ぎ。場所はファミレス。
今日、龍はずっと憧れていた愛美とデートする。
午後1時から近くの遊園地で待ち合わせだ。
ただ、愛美からの要望で、いきなり二人だけ、というのは恥ずかしいということで、龍は俺、愛美はユキを呼んで、四人のダブルデートとなった。
待ち望んでいたチャンスが、急に目の前に降ってくる。
龍にとってはそんな感覚なのだろう。その急な出来事に動揺してるのか、何度も水をおかわり、そしてトイレ、を繰り返している。
そんな龍を、俺は微笑みを浮かべながら見ていた…
…と、これまでの俺ならそう感じていただろう。
だが、今の俺には一つの疑問があった。このままで本当にいいのか、という。