「…あぁ…うん…まぁ……」
歯切れの悪い返事をする。
と、愛美が俺にさらに近寄り、顔を覗き込んでくる。そして細い指で俺の顔を触ってきた。
「ちょっ…おま、なに……」
「うん…殴られた跡とかは…ないね」
愛美の手がスッと俺から離れる。
いくらイトコと言っても急にそんな事されると、ビビる。
「別に殴られてなんかねぇよ」
頭は二回程ぶたれたが。
「…本当に大丈夫?何もされてないんだね?」
愛美は本当に心配そうな顔で、俺に聞いてくる。
大丈夫だったと言えば大丈夫だったが、そうでないと言えばそうではない。
だが愛美の性格上、ヘタな事を言えば過剰に心配してくるので、その質問に対して俺は軽く手をヒラヒラさせて大丈夫だ、という事を示すだけにした。
「…ならいいんだけど…。でもなんで歩人が呼び出されたの?」
うん、それがこの問題の核心だ。
『お前だよお前!お前が原因だっつの!』
…なんて言える訳がない。
愛美はただ勝手に冴島に好かれただけだ。
よって好かれている張本人には非常に説明しづらい。
「…さぁな。いつの間にか気にでも触ってたんじゃね?」
ここも軽く流す。
あぁ、この話題、すげぇ愛美と会話しづれぇ。当たり前だが。
「そぅ……とにかく、これからも冴島君には気をつけてよ」
愛美はまだ心配そうな表情のまま、そう言ってユキのところに戻っていった。
「…お前もな」
俺はボソリと、愛美に聞こえないように呟いた。

