部屋に入ると、独特な匂いが鼻をついた。
その部屋の壁には、多くの賞状が貼り付けられており、その上には額縁が何枚か飾ってある。
額縁の中にいるモノクロの年寄り達を見たとき、ここが校長室だということがわかった。
初めて足を踏み入れる領域に、今回の事の大きさをより強く実感した。
「…失礼します」
龍のその声により、慌てて俺も挨拶を続けた。
「冴島君に…中村君だね。そこに座りなさい」
ずっしりとした貫禄のある声が、丸縁メガネを掛け、頭髪に白髪が混じった還暦を迎えたであろう男から発せられる。
──校長先生だ。
目の前にある高級そうなソファに腰掛け、自らの前に座るよう手で俺たちを促している。
「はい」

