龍の様子を確認する余裕はなかった。 俺たちは職員室の奥にある白い扉の前まで誘導された。 「…ノックして入りなさい」 その先生の役目はそれまでらしく、それだけ言うと自分のデスクへと戻っていった。 「…入るぞ」 ぼそりと龍が俺に聞こえるように呟く。 俺は高まる心臓を抑えるため、大きく深呼吸を一つしてから、頷いた。 龍は俺の様子を見てから、扉を向き、ゆっくりとノックをした。 「──どうぞ」 扉の奥から、低い声がした。 それと共に、龍はノブに手をかけ、開いた。