職員室を見渡すと、何人かの先生と目が合った。先日の出来事が知れ渡っているのを実感する。憐れむような、蔑むような、そんな視線を感じた。だがそれも一瞬で、誰もがすぐ視線を戻し、自分の作業へと戻っていった。
…この中の人たちにもし、事実を話したところで……
味方してくれる人はいるのだろうか……
少し考えた所で、それは無意味だと考え直す。
龍はこの学校じゃ有名な不良だ。
先生たちは出来るだけ関わりたくないと思っているだろう。
そんな中での今回だ。
厄介払いするには正に渡りに船だと思っているに違いない。
俺は改めて状況が最悪な事を実感した。
「──失礼します」
入り口から龍が入ってくる。職員室内の視線は一斉に龍へと注がれた。
その視線を龍は気にすることなく、俺に近付いてきた。
「…おう」
「…よぉ」
互いに交わす言葉は少なかった。
それがこれから大きな岐路に立たされる事を物語っているようで、緊張感が増した。

