「なるほどな。わかったよ。じゃあ頑張れよ!」
そう言って去ろうとすると、冴島はまた俺の肩を掴んできた。
「まてや。俺にここまで言わせたんだ。協力しろや」
「は?な、なにを…」
「俺が愛美ちゃんと付き合えるよう協力しろっつってんだ」
「…協力?」
「そうだよ。運のいい事にオメェは愛美ちゃんのイトコだ。愛美ちゃんについて色々知ってるだろ?そういう情報をくれっつってんだよ」
「…はぁ」
「いいよな?」
冴島は凄みをきかせて聞いてくる。ここで『いやだ』なんて言おうもんならどうなる事か。
…考えたくもない。
「…わかったよ」
俺はしょうがなく首を縦に振った。
なんせとにかく早く解放してもらいたい気持ちでいっぱいだったので、ここは円満に話を進めようと思ったのだ。
「よぅし!話のわかる奴だな!」
そう言って冴島は俺の肩を嬉しそうにバンバン叩いてくる。
「…じゃ、放課後またここに集合な!」
「…は!?」
な、何言ってんだ…
いきなりかよ!
「放課後って…ちょっと早過ぎじゃ…」
「善は慌てろって言うだろ!んじゃ俺はちょっと一服してくっから。また放課後にな!」
それを言うなら善は急げだ。
それに俺にとっちゃ善でもなんでもねぇ。
冴島はそう言い残し、校門の方へ嬉しそうに走っていった。
キーンコーンカーンコーン!
「あ…チャイム…」
今日もまた遅刻だ。せっかく一年に一度あるかないかの早く目覚めた日だったのに…
でも今はそんなことよりも…
冴島に協力すると言ってしまった事に対しての後悔の念の方が強かった。

