一瞬の衝撃の後、デブは五メートル程後ろに転がり、グッタリとKOしている。
周りが唖然とする。
デブの手から逃れた俺は冴島により支えられていた。
「…歩人……悪ぃ……」
冴島は暗い表情で呟く。こんな表情の冴島を見たのは初めてだった。
「…な、なに言ってんだ…ゲホッ…それよりお前……こんな事しちまったら……た、退学に…ゲホッゴホッ…」
「…もういい。喋らなくて」
デブを殴り飛ばした時とは正反対の、穏やかな様子で言い、冴島は俺をそのまま運び、愛美の隣に降ろした。
そして愛美に視線を向ける。
「…愛美ちゃん……本当にゴメン…」
愛美は無言だった。
しかしその表情は怒っているというワケではなく、驚いているという表現が当てはまった。
そして冴島は愛美の縛られている柱の後ろに回り、紐をほどき始めだ。
「…気は済んだかよ。冴島」
紐をほどき終わり、愛美の拘束を解いたところで、タクマがそれを待っていたかのように言葉を発した。

