「それにしても…ふ〜ん…この人が中村君ねぇ…」
ユキはなにやらニヤニヤしながら愛美を肘でつっついている。
「な、なに?」
「いや〜愛美がいっつも嬉しそうに話すイトコの中村君はこんな人かぁ〜って思って」
「う、嬉しそうになんて話してないよ!」
「え〜?口さえ開けば『歩人ってね、歩人ってね』ってばっかじゃん」
「ばっ…ばかっ!そんな事言ってないでしょ!」
愛美は顔を赤くして全力で否定している。
「言ってるって!昨日だって『今日も歩人遅刻してきたんだよ〜』とか…」
「ちょっ…もうバカッ!」
愛美はバッとユキの口を手で塞いだ。もごもご…とユキは変な声を発している。
「今日日直だから早く教室にいかなきゃ!いくよユキっ!」
早口で愛美はそういうと、手でユキの口を塞いだまま早足で昇降口へと向かっていった。
「え〜モゴモゴ…そうだったっけモゴモゴ…」
「うるさいっ」
俺はポカンとそれを眺めていると、愛美が途中で振り返った。
「勘違いしないでよバーカ!」
そう言い残し、愛美とユキは校舎内に消えていった。
「……」
…なにが?
とりあえずただバカって言われた事だけはしっかりと認識できた。
「…なんなんだアイツ」
俺は頭にクエスチョンマークを浮かべながら、昇降口へと向かった。

