──ブンッ! またもデブの拳は空を切る。 自分でも驚くほどデブの動きが読めた。怒りに身を任せた人間の動きは、思った以上に単純で素直だったからだ。 「…っ!クソがっ!ちょこまかと…」 それでも懲りずにデブは単調な攻撃を繰り返してくる。 それを俺がかわす。 そんなイタチごっこのようなものが暫く続いた。 「──…おい。なにウダウダやってんだ」 「クソつまんねぇぞー」 「タカシ早くやっちまえよ」 痺れを切らしたのか、周りの連中が野次を投げてくる。