ヤンキーと俺と恋と



「お前…なんでウチに…」

「や…あの、さすがに四日連続遅刻は止めてあげないと、って思って」


愛美がなぜか照れながら言う。

つか、起こしにくるってのは冗談だったんじゃ?


「お前嘘って言ってたじゃねぇか」

「だからぁ、気を使って起こしに来てあげたんじゃない。感謝してよカ・ン・シャ」

「お気遣いありがとうございます。しかしそれには及びません。なぜならワタクシもう眠りから目覚めておりますので」

「あ、コーヒー飲んでんの?あたしにも入れてよ」


愛美は俺の言葉を完全に無視し、家にあがってきた。俺の横を通りすぎ、リビングへと向かっていく。


…そういえば、敬語を使い始めたのはいつからだろう?最初は敬語なんか存在しなかったはず。それとも最初が敬語だったのか?いつから敬語が生まれたんだろう…。


そんなどうでもいい疑問がふと浮かび上がったが、大事な事が急に頭に思い浮かび、それまで考えていたことが一蹴された。




「…ちょ、まて!ブレンディはやめろ!あと一杯分しかねぇ!」


俺は慌てて後を追うが時既に遅し、ブレンディは新たなコーヒーカップに入れられ、愛美の胃袋へ流し込まれていた。


「あぁ…最後だったのに……」


愛美が台所に入りコーヒーを入れるまでの早さはまさに神速だった。これだから家を知り尽くしてる奴は…


「ふぅ…ごちそうさま!さ、早く支度しないと学校間に合わないよ?」


しれっと愛美が言う。コイツにはもう何を言っても無駄なので、俺は渋々学校の支度を始めた。