葉と教室を出て、廊下を歩いていると、前方に愛美の後ろ姿が見えた。
「あっ…愛美ちゃんだ」
「……」
口を噤む俺を見て、葉は複雑な顔をする。
「…あれから愛美ちゃんとは話してないのか?」
「…あぁ」
愛美と言葉を交わさなくなって、もう二週間近く立つ。
校内で見かけてもお互いにしゃべり掛ける事はなかった。
なにより、何を話していいのか分からなかった。
俺達の間にできた溝は、依然として深いままだ。
「そっか…」
葉はそれ以上何も言わなかった。
冴島の停学がそろそろ解ける。
しかしそれにより何か変わるとは思えなかった。
冴島が帰ってきて、また同好会を再開する事になったとしても
しこりのような違和感が俺の中に居座り続け、それはずっと消える事がないんだろう。
…そんな確信にも似た感覚を俺は感じていた。
俺と葉は愛美の後ろ姿を追うように、昇降口へと向かった。

