俺と愛美が校門まで出ると、そこにこの学校の有名人が校門の壁に寄り掛かり、しゃがみ込んでいた。
有名人、と言ってもいい意味ではなく、むしろ逆で、そいつは入学してもはや三日でその悪名を学校中に轟かせていた。
名前は冴島 龍平(さえじま りゅうへい)。ヤンキー校とは程遠いこの学校の唯一のヤンキーだ。
髪はワルを象徴するかのような真っ赤なリーゼント。ドカンのズボンに刺繍の入った学ラン、といういかにも、という服装にでかい鎖のようなネックレスを首からぶら下げ、周りにガン飛ばしまくっている。
ヤンキー特有のうんこ座りをし、獲物を狙う鷹のような目をするその姿は、この至って普通の高校では明らかに浮いていた。
「なぁに見てんだゴルァ!!」
ヤンキーをチラチラ見ながらそばを通りすがった、メガネをかけた学生がビクッとする。
「てめぇナメてんのかコラ」
「ひぃぃ!ご、ごめんなさいっ」
メガネ君はすぐさまそのヤンキーをチラ見する、という狼藉に対して謝り、ダッシュでその場から逃げ去っていった。

