「奥様、おはようございます…」 今日も同じように、元気のない声が届いてくる。 「ごめんなさいね…。 拓海、もうすぐ来ますからね?」 先ほどの本性を潜めて、東条の妻として蘭に話すお袋。 まぁ、蘭に対しては他の人より砕けている気もするが…。 それでも笑顔を絶やさず、常に優雅に振舞う―― これこそが、東条に生きる者の定め・・・ 「蘭…、行くぞ」 「あ、ハイ・・・」 そんな会話を聞いてから、暫くして蘭の待つ玄関へ向かうと。 返事どおりに何処か辛そうな表情で、今日も後ろをついて来る蘭。