こんな所で泣いたら、ただの同情なのに・・・
「蘭、止めろ・・・」
ギュッ――
手を制されると、そのまま拓海の胸へと引き寄せられた。
「ッ・・・」
初めての事態に戸惑って、ドキドキと高鳴る心音。
あたし…、抱き締められてる――?
固まったまま動けず、心臓の鼓動だけが早さを増していく。
どうすれば良いのか分からなくて、ギュッと眼を瞑った。
すると・・・・
「必ず戻るから…、待っていてくれ――」
え・・・?
ポツリと呟かれた言葉に、すぐさま目を見開いてしまう。
「必ず此処に、戻って来るから…な?」
「っ・・・」
優しく髪を撫でられ、諭すような声で胸がギューッと締めつけられた。

