それでも悲しくて、何も言えないよ・・・
「蘭…、話を聞いてくれる?」
カチャリ――
沈黙の中で微かな音を立てて、カップをソーサーへと置いた。
こちらをジッと捉えるブラウンの瞳に、ゆっくりと頷くあたし。
すると彼は微笑んだあと、ひとつ溜め息をついて話し始めた。
「俺はいずれ、東条財閥を背負う事になるだろう?
だから、アメリカに行くのは当たり前の事なんだよ。
トップに立つ者は常に冷静沈着で、広く物事を捉えなければならない。
それには学ぶ事が山程あって、時間は足りないくらいなんだよ。
色々な価値観や感性を養って、東条の人間として恥じぬようにね…」
フッと笑って、そう言葉を締め括った。

