She and I・・・

喫茶店を後にする。

僕の腰に廻した彼女の腕の力がさっきまでより強い気がした。

山間部へと続く道は、
車線の数を減らしながら少しずつ市街地から遠ざかっていった。

大きく登ったり、
少し下ったり、
緩やかなカーブを繰り返しながら、
いつの間にか峠道を走っていた。

路面の状況を注意深く判断しながら、これ以上はないというくらい安全運転に徹した。

時折、道の片側が完全に開ける度に
見下ろす景色がきれいに広がり、
高度も増していくのがわかった。


何度かそんな景色を繰り返したあと、
中腹の見晴台に到着した。

バイクから降りて、
ヘルメットをとった二人は屈伸運動をした。

目の前には雄大な景色が広がっていた。

「ごめんね。疲れたよね」

と彼女は言った。

「うん。めちゃめちゃ緊張したし」

えっ
という顔を彼女がした。

--そんなことないよ--

という返事を予期していたのかもしれない。


「一番大切な人を乗せてるんだから緊張するよ・・・」


「・・・千夏ちゃんは、僕の一番大切な人だ」


彼女の顔を見つめる。

彼女は息をのんでから、
「ありがとう。うれしい」
と言った。