She and I・・・

一口飲んでから、
「うちの方がおいしいよね」
と彼女は言った。

「君のところはいい豆にいい水を使っているみたいだからね」

彼女は一度眼を伏せてから、僕を見つめ直して言った。

「最近になって、やっとわかったよ。大事にされてることとか」

「うん」

「教授の子だって言われるのが嫌だった」

「うん」

「いいことをすれば、教授の子だからと言われ、悪いことをすれば教授の子なのにって言われた」

「ひどいよね」

「反発したわけじゃないけど、人間不信気味になっていたわ。他人に対して少しとんがっていたかも」

「僕と出逢った頃も?」

「そうね。少し。でも治りかけだったから良かったのよ」
「きっかけがあったの?」

「特には思い付かないわ。単純に年齢を重ねたからかも。でも、奈良さんと出逢ってからは完全に回復傾向」

「へえ」

「うちでテストオペレーターをしている奈良さんに指示を出している父の姿を見たり、自分が受験に向かって高度な勉強をするのにしたがってね」

「お父さんの凄さがわかってきた?」

「入学してからは余計に実感したわ。この世界で生きていくのに父の影響からは逃れられない・・・」

「うん」

「そして、やっと自分は可愛がられて育ったと知ったわけ。ばかな娘だわ」

「気付いたのだからいいじゃないか」

「こう見えても奈良さんには感謝しているの」