モニター上で遠ざかっていく観測球に千夏の姿が重なる。
逃がすわけにはいかない。

思わず通常モードを解除して、急速にアームを動かす。

自分でも人間業とは思えないスピードと正確さで操作していく。

グーッっとアームが伸びて行き、ギリギリで観測球を確保する。

「すみません。回収しました!」

ほうっと息を吐き出す声があちこちでした。

みんなも息を止めていたのだ。

「リトライします」

そのままのモードで、
かちゃかちゃと忙しく多くの操作をしながら、観測球を置いた。

「・・・10・・・20・・・30」

「・・・1分・・・・・5分・・・」

10分までカウントしてサラが観測球の静止を報告した。

「よし、引き続き観測球を基準にしながら反転開始。クリス、サラと連携して慎重に」
艦長が指示を出す。

「了解」というクリスとサラの声。

「イタル良くやった」という艦長の声を最後に、僕の耳から操縦室のざわめきが遠くなっていった。