She and I・・・

クリスの一言でシフトが変わった。

操縦士のポジションをクリスとダンだけで廻すのではなく、僕も加わった三人で交代する体制に艦長が変更した。

たまにクリスやダンと組むこともあったが、自分が操縦席に座った時には今まで並んだことのない人とも一緒になった。

サラと最初に組んだ時は、クリスが感情を爆発させた時の話になった。

「正直おどろいたわ。短い付き合いではないけどクリスのあんな姿、初めて見た」

サラはクリスより何歳か年上で、クリスの新人時代も知っているベテランの航海士だ。

美人という表現は当たらないかもしれないが、魅力的な女性だった。

「僕も驚きました。でも・・・」


「でも? ・・・でも、良くわかる?」

「はい」

「あなたにもあなたを待っている人がいるのね」

「えぇ」

「あの時、冷静に操縦を続けていたあなたに感心したわ」

「いえ。クリスと同じ時間は耐えられなかったと思います。彼はずっとプレッシャーと戦っていました・・・」

「・・・きっと最初からいろいろなことがわかっていたのでしょう。だけど僕は事態を正確には理解していなかった・・・」

「・・・本当は今でも、これは現実の出来事ではないのではないかと思ってるんです・・・」

「・・・その違いじゃないでしょうか」

「・・・だから、僕は冷静だったわけではありません・・・」


「・・・もう彼女に逢えない、なんてことが信じられないだけなのです」


「そうね。その気持ちはわかるわ」

「私には待っていてくれる人はいないの。そう、家族の他にはね。だけど・・・」

そう言ってサラは自分の経験を教えてくれた。