これは三十年前の話である。

あれから、私たちが宇宙を光速かそれ以上の速度で移動していた間に、残っていた人たちが過ごしたのと同じだけの時間が流れた。

もちろん追い着けるわけでもなく、残っていた人たちには更なる三十年が過ぎただけだし、むしろその前の三十年よりも多くの知人が次の三十年をまっとうすることなく亡くなった。

亡くなったといえば、一緒に宇宙へ出ていたサレンパーカー艦長も一昨年前にこの世を去った。
艦長は他の乗組員より年長だったから不思議はない。

そもそも死は誰にでも訪れるのだ。

しかし、母親のような年齢の自分の妻を看取り、自分の息子と兄弟のように同じ時を過ごしたのちに、息子より少し長く生きてから死すことになるとは予想外だったろう。

生涯の友であるドクがひどくがっかりしている。

クリスは退局して空軍のパイロットになった。
しばらくはやりとりをしていたが、連絡がとれなくなった。
戦死したという噂もあったが、定かではない。
ただ、あれ以来一度も会うことはなかった。

サラはロイと暮らしている。
時空を超えての遠距離恋愛を実らせた二人は幸せそうだ。

ダンとアンヌも、帰還から二年後に結婚した。

今思うとダンにはクリスに尊敬以上の想いがあったのではないかとも考えたこともあったが、ダンとアンヌのあいだには確かに愛があった。

しかし、その五年後に二人は離婚した。

きっといろいろあったのだろう。

死が二人をわかつまでもなく、愛は終わることもあるのだ。