玄関を見上げただけで、
ガチャリと扉が開いて千夏が出迎えた。

「今日はスーツなんだね」
へーという顔をしている。

「社会人だから」
と言うと、
「お嬢さんをください! の日?」
と小声で訊いてきた。
「違うよ。出航の挨拶だ」

「そっか、残念」
と微笑む千夏はわざと明るく振舞っているようだった。