To:イタル
From:チナツ
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イタルのご両親が--
お父様とお母様が--そうお呼びしてもいいでしょう?--先日イタルの部屋を引き払いました。

私と兄も立ち会いました。

部屋にあったほとんどのものはご実家に送られました。

オートバイの扱いには困られた様子でした。

兄が
良かったらお預かりしましょう
と申し出ました。

お父様が、
形見としてもらってほしい
と申されました。

"形見"という言葉に、
お母様も私もひどく動揺してしまいました。

お母様も、
あなたの帰りを信じているのだとわかりました。

とにかく、
オートバイはうちでお預かりしています。

放っておくと痛むから
と言ってたまに兄がエンジンをかけているようです。
私のいない時に。

オートバイのエンジン音がするたびに、
イタルのことを思い出し、

私の胸が痛むからでしょうか。

早く帰って来て、
また後ろに乗せてください。
あの日のように・・・