目的地まであとわずか、
しかしながら地上との交信--映像・音声--圧縮信号その他すべて--が不能になってすぐのことだった。
航海士のサラがサレンパーカー艦長に告げた。
「艦長、座標不明です。ナビゲーションシステムがダウンしてしまったようです」
艦長が即座に反応した。
「クリス、全ての操舵を緩やかに停止。進行方向に変化を生じさせないようにだ」
「了解」
「イタル、ダンをたたき起こして来い」
「了解」
僕は、操縦室を後にしダンのプライベートルームへ向かった。
部屋のブザーを押す。
二度。
三度。
「誰だ?」
やっと不機嫌そうな声がスピーカーから流れる。
「イタルです。エマージェンシーです」
「エマージェンシー?」
ほぼ同時に扉が開く。
半裸で寝起きのダンが現れる。
「何が起こった?」
「わかりません。艦長が呼んで来いとだけ」
「すぐに行く。先に戻っていてくれ」
「はい」と振り向いて、
戻ろうとした腕をつかまれた。
ぐっと引き寄せられる。
目の前に顔があった。
「ク・・・誰かの身に起こったトラブルか?」
睨むように訊いてくる。
「そういうことではないと思います」
「・・・わかった。行ってくれ」
「はい」
今度は本当にダンを後にする。
そして本当はどういうエマージェンシーなのかわかっていなかった。
誰かの身に何か起こっているのか、
いないのか・・・


