降り立ったバス停のベンチに、参考書から眼をあげた少女がいた。
高校生くらいだろうか?
こっちを見て、
すっくと立ち上がり
「失礼ですが、
奈良さんでしょうか?」
と尋ねてきた。
はい。
と答えると、
「大宮です--」
「--大宮冬雄の妹です」
と言った。
失礼なことに、僕は「はあ」とかなんとか言葉にならない返事をして彼女を頭から爪先まで眺めてしまった。
きれいなコだ。
「兄に頼まれてお迎えにあがりました」
そう言われて、はっと我にかえった。
「それはすみません。助かります」
取り繕うように答える。
それが彼女との出会いだった。


