〜花魁〜




いつも通り会社に行って

いつもと同じ事を繰り返す中



―ある日

珍しく残業もなく、太陽が沈みきる前に会社を出る事ができて

家までの道のりを、自分の影と共に歩いた。



しばらく歩いていると…


ポタッ…と冷たい感触が頬に当たり
空を見上げると、ほんの数分前まで晴れていた空が
黒く淀んでいて…あっという間に大粒の雨に変わった。



『うげー…』



傘なんて持っている訳もなく、直ぐ近くに見えた喫茶店までひとっ走りする




――カランカラン


ドアが開いた事を告げる鐘が鳴り、店員がこっちに向かって声をかけて来た


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」



辺りを見渡すと、ポツポツと客がいる程度で
ほとんど空席に近い状態…。



窓際の席に腰をかけ、目の前には頼んだコーヒーが湯気をたてている。



『はぁー…。』


今日は、BARのバイトも休みやし
早く帰って、ゆっくりしたかったのに…。


『ついてねぇ…』


思わず零れた言葉は、溜め息が掻き消してくれ

髪についた雫は、ポケットに入れてあるハンカチで拭き

元から何もなかったかの様に顔色ひとつ変えない。







.