〜花魁〜




『1人ですか?』


暇な店内には、小さい音量で音楽が流れているけど…他に対して客もいないから、普通に喋っている声でも、やたらと響く。



「見ての通り。」


そう言って苦笑いをする彼女に、俺まで苦笑いになる



『ですよねー。変なこと聞いちゃってスミマセン』



カップルで溢れ返る聖夜に、こんな廃れたBARに1人で来る位やから…彼氏はいないのかな…?


なんて、蓮さんにも失礼な事を考えた。




「うぅん。たまたま…フラッと入っただけやのに、こんな所で会うなんてほんまにビックリしちゃった!!」


『俺も!!こんな日に客なんて来ないって思ってたから。笑』


「そんなこと言うてイイん?笑」


『他の人には内緒で(笑)』



口の前で“シー”って、人差し指を立てると

空と同じ大きな目を細めて笑うから、

それだけの事やのに…目頭が熱くなった様な気がして、必死に堪えた。




「ねえ…?名前…教えて?この間、全然聞いてなかったんだよね。」


『光…、坂本光!!君は?ちなみに、俺も全然聞いてなかったから(笑)』


「あははーー。アタシは花!!佐々木 花(ササキ ハナ)。改めて宜しく♪」








――花


今日は、この間の雨とは打って変わって

月が綺麗に見える夜で、久しぶりに心の底から笑えたんや。

肌を刺す冷気も、空に執着する歪んだ渦も

少しだけ忘れられたんや――。







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