しばらくして落ち着いて来た彼女は、俺から離れると
「ごめんなさい。」と一言だけ言い、再び俯いた。
『えっと…大丈夫…?』
こんな時、気のきいた言葉のひとつも言えない俺
てか…いきなりの事で頭がついて来なかったって表現が正しいのかも。
放っておいたらいいのに、目の前で小さく小刻みに震える彼女を無視するなんて事は出来なくて
ポケットからハンカチを出し、彼女の濡れている髪の毛を拭いた。
「ありがとうございます…。大丈夫なんで、気にしないで下さい!もう…帰るんで。」
そう言って、人混みにまみれて行く後ろ姿を見ていた。
やっぱり…後ろ姿は空じゃない。
背の高さも、歩き方も、何もかも…空じゃない。
当たり前やけどさ……
分かってるのに、彼女の後ろ姿に
あの日の空の後ろ姿を重ねて見た…。
『空……。』
何で、近くに…俺の隣にいてくれないんや……。
俺は…空がいないと勇気のひとつも出ない情けなくて、どうしょうもない男で…
無駄な意地ばっか張って、気持ちも伝えられない。
『逢いたいなー…。』
口から零れ落ちるのは、タメ息と
虚しさだけが残る…独り言だけ。
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