〜花魁〜



『ふぅー…。』


ドアの前で深呼吸をして
ノブを掴む手に力が入る。



怖い……。

この向こうに空がいるって思ったら
逃げ出したくてたまらない―…。



ふと、後ろに目をやると貴史と目が合い
「早く行け」って顔をしていた。




――ガラガラ。




ドアをスライドさせた途端
真夏やのに、思わず身震いする程の冷気を感じ
中に入ると、エアコンが強烈に効いていて寒い。



「兄ちゃん…遅い。ここ座りなよ」


そう言って、目の前で横たわる空の隣に座っていた海が席を空けてくれた。






顔にかかった白い布を、震える手でゆっくりとどかす。



『………っ、』



あぁ、空や―…。

俺の大好きな空や。




さっきまでグルグル巻きだった包帯が外され
傷だらけの顔が姿を表した…。



『空…、女の子やのに…こんなに傷作って―…。』



まだ泣かない。まだ泣けない。


熱くなる目頭を必死に堪えて
思いっきり唇を噛み締める。




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