現実(リアル)-大切な思い出-

「何で、そんな顔すんの?」


「そんな顔?」


「どうでもいいって顔…」


ああ‥と思った。

無表情な俺の顔が、お気に召さなかったらしい。

彗の表情は、少し怒気を含ませているように見えた。


「どうでもいいからだ」


「何それ…」

先程まで楽しそうにしていたのに、彗は完全に機嫌を損ねたようだった。

「自分のこと言われてるのに、どうでもいいわけ?あんた感情ないの?」


「‥感情のない人間なんて、存在するのか?」


「はぁ?」

彗は、呆れたように声をあげた。


俺は、自分に感情がないとは思ってはいない。

ただ、他人よりそれが薄いだけ。

ただ、他人よりそれが表現できないだけ。

それだけだ。