現実(リアル)-大切な思い出-

「なぁ、あんたが日暮(ヒグラシ)‥なんだよな?」


委員会終了後、早々に立ち去ろうとしていた俺は、彗に呼び止められた。


少し驚いた。

この俺に話し掛けようとする人間は、まず居ない。

致し方ない用事でもない限り、“ありえない”と言っていい。


「‥何?」


「噂に違わず、無愛想だな」

そう言って、彗は笑った。


笑うと、益々女のように見える。


俺が黙っていたため、機嫌を損ねたと勘違いしたらしい。

彗は、慌てて謝ってきた。


「悪かったって。そんな怒んなよ」


「別に怒ってない」


俺が静かにそう呟くと、彗は驚いた顔をした。

何故そんな表情になったのか、俺には理解できない。

暫く沈黙が続いていたが、やがて彗が、思い出したかのように口を開いた。