私は神楽家の長女で、兄弟はいない。

「お嬢様」なんて呼ばれたことはないし、家に何十人ものメイドが居るわけでもない。

けれど確かに、私はそれなりの家柄の人間だった。


１０歳の誕生日夜、神楽家では、私の誕生日パーティーが開かれていた。

パーティーと言っても、それほど大きなものではない。

お得意先の方々ばかり‥というわけでもなく、殆どが親戚ばかりのパーティーだった。


「おめでとう、星ちゃん」


「ありがとうございます」

私はそう言って、小さく頭を下げた。


「いやぁ、本当にしっかりしてる。とても１０歳とは思えんなぁ」


「いえ。この子にはこれから、まだまだ頑張ってもらわなければ…」


「そうだな。君は星ちゃんを後継者に‥と考えているようだからね」


両親は、私が幼い頃から、私を後継者にするつもりでいたらしい。

そのことは、純粋に嬉しかった。

今の時代でも、後継者には男を‥といった考え方は少なくない。

そんな中で、両親は躊躇いもなく私を選んでくれた。

期待されていることが判り、嬉しかった。

けれど、幼すぎた私は、それと代償にしなければならない沢山のものがあることに気付けなかった。

何も判っていなかった。