現実(リアル)-大切な思い出-

「何だよ、ただ見せてもらってるだけだろぉ?」

男は紙を高く持ち上げたまま、意地の悪い笑みを見せた。

「ケチケチすんなよ」


「見る気なんかねぇくせに」

彗は男を睨みながら、それでも余裕を見せ付けるかのように、口元を引き上げた。

「どうせ木戸さんに振られた“はらいせ”だろ?木戸さんが俺の作った曲を褒めてるの見て、やきもちか?」


「てめぇっ!」


彗の挑発するような態度に、男は怒りを露にした。

そのまま殴り掛かろうとする。

だが、それより先に彗の拳が、男の腹に命中した。

「うっ」と情けない声をあげて、男が崩れるようにしゃがみ込む。


「はっ、弱ぇな。喧嘩売るなら、もう少し強くなってからにしろよ」


「女男のくせに、調子に乗んな!!」