滲んだ月はどれだけ睨みつけても
その形を変える事はなかった



優しく微笑むような
残酷なまでのその美しさに背を向け

僕は部屋の中に入り
Tシャツの袖で目蓋をぬぐった


そこに立てかけてあったベースを持ち
何も考えずに弾こうとしたが

その音はどこへ辿り着く事もなく
部屋の暗がりへ吸い込まれて行った



僕はふとんにくるまって
体の中から生まれる溢れそうな熱を
必死で抑え込んだ



それを月は手招きするように
僕を照らし出していたに違いない



夜になれば何処にも逃げ場はないのだ


「明月エルンスト」