頭の中に、また金台座の天秤が現れる。
浅野くんと楽しそうな私の台座と手紙を書く姿の私の二人がいる

今は、確実に一人の私が勝っていた――

そう――確かに、この時までは、打算的な思考がそう語っていた。

半分妄想で終わったゼミから解放され、いつの間にか午後の日差しの様相をしていた。

ゼミ室を出たら見かけた顔があった。

あの浅野くんが廊下の椅子に座って気持ちよさげに寝ていた。

ゼミ室は南校舎の三階にあり、ゼミ意外には生徒は来る機会も無いので、確実に私を待っていて寝ていたのかな――?

甘栗色の綺麗な髪が微風に揺れる――
甘い石鹸の匂いが風に揺られて微かに感じる――

そういえば、浅野くんは文章は変だけど、趣味は意外と情熱的だったんだよなぁ
思い出しながら、子供の様な屈託ない寝顔に改めてキュンとする。

さっきまで、関わらないと決めていたのに――

浅野くんの無防備の顔がこんなに、私の鉄の判断を濁らすとは――

立っているのも大変なので横に座る。
なんとなく幸せな感情が溢れだす――

可愛いペットを見るような感じを抱く――

これが恋いなのか?
戸惑いながら、いつのまにか寝ていた――

いつの間にか日が沈みかけて辺りは暗くなっていた。