人の気配が近づいてくる。
案の定、茂みの向こうから遠慮がちな声が聞こえた。
「……蓮?こんなところで、何して……」
柔らかな髪を揺らせた男が、そっとこちらを覗き込んだ。
……斎か。
絶妙のタイミングで現れたな、まったく……。
木の幹に体重を預けて、再度ため息を付く。
斎が俺を一瞥してから、周囲をくるりと確認した。
途端に目を瞠って。
「……詩乃?!」
茂みの外から、こちらを覗き込んでいた斎が慌てて詩乃の元へ走り寄ってくる。
泡を喰ったように。
横たわる詩乃の上半身を抱え起こした。
少女は、ただ重力に従って。
他人から加えられた力にもダラリとしたまま。
目を伏せている。
斎がいくら覗き込んでも。
声をかけても。
………今、呼び捨てにしやがったな。

