取り敢えず、何かの建物の側まで来て、乱れた呼吸を必死で正す。
少しだけ、まだ顔が赤い。
でも、清廉な空気を胸いっぱい吸い込んだ。
……忘れよう!
私には縁のないこと!!
だから、見なかった!
何も!
そう思って、脳裏に焼き付いた、男の広い背中と、それに絡み付く女の脚を、振り切る。
「……おい、お前」
振り切った、はずだった……のに。
突如、腕に強い力がかかった。
「………わ?!」
引っ張られて。
壁に押し付けられる。
そうして目の前が陰ったと思ったら。
見知らぬ男が間近に迫っていた……。
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