馬鹿にされるかな、と思いきや。
蓮は口調を変えない。
…真剣そうな、まま。
「……何が食べたい?」
「……?……今は…。普通の、ごはんがいい。白い、ごはん」
「………なるほど。てことは、エンゲージはしてないんだな…」
後半は独り言みたいに呟いた。
それから少し思案するように、眉間に皺を刻みながら、目を伏せた。
エンゲージ…。
昨日も出てきた、単語だ。
…こ、婚約?
……違う、そんな…内容じゃないはず。
意味を問い返そうとした、瞬間。
パッと蓮が目を開けて、再度私を捉える。
ドキ、と心臓が揺れた。
「詩乃。キスしてもいいか?」
「………?!」
「大丈夫。特に意味はないから。確かめたいだけだ。ただの実験だと思ってくれたらいい」
軽くそう言い放って、蓮は忍び寄ってくる。
う、……嘘つき!!
触らないって、言ったばかりなのに…!!
瞬時に青ざめて、私は後退する。
茂みの奥に体を埋もれさせる。
バキバキと、抗議の声を上げるみたいに草木が折れ曲がる。
「……いや!!」
「詩乃。ちょっと大事なことなんだ。…多分、お前にも」
蓮が間近に迫る。
忍び逢うみたいに。
草木に埋もれながら。
私は必死に蓮を押し戻す。…効果はないけれど。

