「…蓮?」
思考に没頭しようとしているのに、コンコン、と続き戸から響いたノックがそれを破った。
軽い舌打ちが漏れる。
返事もせずに、ただソファに足を投げ出した。
どうせ、勝手に入って来る。
優等生の寮長さんは。
案の定、ドアが開く音がした。入るよ、と軽く断って。
「……斎。何だ」
「…詩乃ちゃんとこ、行ってたんだろ?」
…珍しい。
銀フレームの眼鏡の奥。
いつもは穏やかな光を宿しているのに。
今は、いつになく厳しい色をしていた。
淡い茶色の髪がサラサラ揺れる。
あっさりと…。
コイツには懐いていたな。
斎に向かう、詩乃のほんわかした顔が蘇って、俄かに苛立つ。
「…だったら何だ」
「……あの子で遊ぶなよ」
本気で珍しいな。
…硬い口調。
眉間に皺を刻んで。
だから、一層挑発してやりたい気持ちになる。
「…俺の自由だろ?」

