………帰りたい。
そう思ってしまった、途端。
ぶわり、と視界が水に歪んだ。
だから、慌ててベッドに潜り込んだ。
涙と鳴咽がとめどなく溢れてくるけれど。
隣には観月くんもいるし、またうるさくするわけにもいかない。
…だから必死でシーツにしがみつく。
世界に泣き声が零れないように。
歯を食いしばる。
帰りたい。
帰りたい。
…家に、帰りたい。
帰る家は、もう何処にもありはしないけれど。
…帰りたいよ。
ママ。
………偲さん。
ひとしきり、泣いて。
泣いて。
私はゆったりとまどろむ。
鳴咽が張り付いた喉を宥めるように、深く呼吸をすると。
頭の片隅に、優しく笑うママの影が映った。
…偲さんの笑顔も。
…大丈夫。
これまで幾度もこうやって泣いてきた。
夜が、涙を丁寧に吸い取ってくれることも、知っている。
だから、大丈夫……。

