……始まりは、些細なことだった気がする。
新生活に胸を躍らせる、春。
私は身の回りの荷物をカバンひとつに詰め込んで。
学校の前に立っている。
…明日から入学するこの学校に。
3月まで、死ぬ気で勉強して勉強して、この私立の学校へ入学することができた。
特待生として。
由緒ある学校。
校舎もレトロな趣をところどころに残していることから、その過去が伺える。
正門から正面玄関にいたるまでの長い道とロータリーは、かつて馬車道だったという。
旧校舎はレンガ造り。
新校舎は、できたばかりの近代的な建物だ。
一瞬の違和感を覚えながらも、校舎へはむかわず、敷地内のはずれにある、寮を目指す。

