僅かに苛立つように音が大きくなったから、慌てて返事をする。
途端、扉が勝手に開いた。
「遅い、詩乃」
長身の影。
尊大な口調。
…青い筋交じりの黒髪。
胸元を乱すように、白いシャツを着た………蓮!?
「………何で?!」
「夜の挨拶はこんばんは、だろ。俺、お前の先輩。少しは敬え」
綺麗な眉を片方だけ吊り上げて、グニッと私の頬を抓る。
「い、いひゃいいひゃい!」
私が無様な抗議を示すと、彼はパッと手を離して、平然と部屋の中に侵入してきた。
ああ……!
やめて!!
入って来ないでよぅ…!
青くなる私を他所に、蓮は部屋中を見渡す。
何を一通り確認したのか、最後、私に目線を投げる。
…ドキ、と。
動悸がした。
「本当に荷物ないんだな」
「………は?!」
「観月が言ってただろ、モノないって」
あ、………ああ。
さっき、そんな話題も少し出たな…。

