それにしても。

「晶はどこに行ったんだ?」

私が軽トラの助手席に乗り込むと、おじさんは呟いた。
そう、私も気になってたんだ。晶がいないこと。

「遊びに行っちゃったんですかね?」

おじさんと2人、首を傾げる。
玄関先ではおばさんとおばあちゃんが手を振っていた。

「まったく。大事なときにいないんだから。」

おじさんが深いため息を吐き、車が動きだそうとしたとき、1台の自転車が軽トラの前に飛び出してきた。
自転車の前かごからは黄色が溢れ出している。

「こらっ!危ないだろ!……晶か?」

確かに、自転車の少年は晶だった。

「お前、今までどこに行ってたんだ!」

おじさんは別の意味で怒り出した。

「今日は家にいろってあれほど言ってただろ!」

怒鳴るおじさんの目をまっすぐ見つめて、晶は一言だけ、でもはっきりと言った。

「誰かを喜ばせるために仕事してたんだよ!」