夢を語れる人は大人だ、と私は思う。
それだけ将来のビジョンが明確に描けてるってことだから。
その点で、晶は私よりずっと大人だった。

「そうか。私なんて、将来のことなんか何も考えてないのに。晶は偉いね。」

「別に。偉くなんか、ないよ。」

素直にありがとうって言えずに強がるところは、まだまだ子供だけど。

「死んだじいじがいつも言ってたんだ。誰かを喜ばせるために仕事しろ、って。どんな仕事でもいいから。」

誰かを喜ばせるために、か。
簡単なようで実はすごく難しいこと、なんじゃないかな。

「オレね、農業なら人を喜ばせることできると思うんだ。おいしいとか、きれいとか、言われるとオレも嬉しくなるし。だから、オレ、やっぱり農家になりたい。」

「じゃあね、晶。そのこと、おばさんに言った方がいいよ。」

「でも、母さんは嫌がるんじゃ……。」

違う、おばさんは嫌がってるんじゃない。
大人心も複雑なのよ、晶。

「大丈夫。おばさんは晶のこと心配してるだけだから。晶の気持ち、ちゃんと伝えればわかってもらえるよ。」