「家はここから遠いから、迎えに来たんだよ。わざわざ都会から女の子がお手伝いに来てくれるんだからねぇ、駅までくらい迎えに行かないと……。」

さぁ乗って、と山野さんが指差した先には一台の軽トラがあった。
私、軽トラなんか乗ったことないよ……。

「あっ、荷物は後ろに載せて。」

「後ろ、ですか?」

「そう、荷台に載せて。」

私は泥だらけの荷台の中で、できるだけきれいな部分を探して荷物を載せた。
このバッグ、お気に入りなのに……。

「ごめんねぇ、この軽トラ、クーラー付いてないんだよ。ちょっと暑いけど我慢してね。」

山野さんは笑顔で言うと窓を全開にする。
って言うか、この科学が発達した時代にクーラー付いてないって。

「ここに来るのは初めて?」

山野さんがエンジンをかけながら訊くので、私は、はい、とだけ答えた。

「いいところでしょう、のどかで。」

ブルン、と大きな音を立てて軽トラは動き出した。
開け放たれた窓からは、草の匂いをいっぱい吸い込んだ夏の風が吹き込む。遠くの畑で、おばあさんが座り込んで何かしているのが見えた。
山野さんが言うように、確かにここはいいところなのかもしれない。