電車に揺られること３時間、私はやっと指定された駅に着いた。

電車を降りたらそこは無人駅。この駅で降りた客も、私一人しかいない。
回収ボックスに切符を入れ、駅を出る。目の前には一面、田畑が広がっていた。

「林 美優(はやし みゆ)さん、ですか？」

突然、話しかけられ驚いて振り向くと、よく日に焼けたおじさんが笑顔で立っていた。

「やっぱりそうだ。いやー、都会の子はオシャレだからすぐにわかったよ。」

ははは、と笑いながら話し続けるおじさん。
……この人、誰だ？

ポカンとした顔で見つめる私の様子にようやく気付いたのか、おじさんはやっと自己紹介を始めた。

「ごめんごめん、まだ俺が誰か言ってなかったね。山野です。って言っても、みんな山野だからなぁ……おじさんでいいよ。」

笑い続けながら山野さんは言った。

「あぁ、初めまして。林 美優です。これから一週間、よろしくお願いします。」

とりあえず私も決まりきった自己紹介を済ませた。