海に花、空に指先、地に霞


ちょうどそのころに、家中の電気が付き始めて。
緩やかな時間に支配されはじめる。
にぎやかな時間とも思う。

今の台所の主は、類稀れな美貌の男だけど。

台所には…いつも…母の影を、感じる。

そんな、いろいろなイメージが一緒になって。
なんだか、やさしい気持ちにもなれる。
もちろん、淋しい気持ちにも。

「……ねぇ、凪世」

「うん? あ、コショウとって」

ジュワジュワと、木の子やら野菜やらを炒めながら、フライパンから目を離さずに、凪世が答える。
私は、ひどく不安定な気持ちを抱えながら、コショウを手渡す。

……聞きたいことが、ある。