彼も満足気に頷いて、ゆっくり手を離してくれた。
はぅ、とやっと自由になった口から、溜息のように呼吸が漏れた。
「ごめんね。驚かすつもりじゃなかったんだ。…玄関からの正面突破が一番いいと思ったんだけどな…」
「…………」
「沙杏ちゃん、オレね、ナギセっていうの。凪世」
それは…さっきも聞いた…。
「でね。オレ、一応、海の王なんだけど」
は?
ウミノオウ…?
…やだな…。
すごい、いやな予感…。
「100年に一度、王家の掟で、地上から花嫁を迎えなきゃいけなくて」
あ~…
もう、雲行きが最高にアブナイ感じ………。
「その花嫁さんが、沙杏ちゃんなんだ」
…………。
「というわけでさ、オレと結婚しない?」

