海に花、空に指先、地に霞



「ど、どろぼ………!!」

「ストップ!!」

「ふがっ!」

今度は大きな手で、口を塞がれる。

「し--…、落ち着いて?何もしないから。話を聞いて欲しいだけ」

不覚にも、涙が浮かんだ。

やだもう…。
本当に怖い……!

ちょっと美形だからって、一瞬でも見惚れた自分が憎らしい。

ぎゅっ…と眼を閉じる。

そのまま。
二人して硬直したまま、膠着状態。

…しばらくして。
何にもされないことに気がついて、私は恐る恐る、眼だけで彼の顔を見る。

手で鼻と口を押さえられているから、息苦しくなってきたし。

本当に…綺麗な、顔。その美貌に、当惑した表情が浮かんでいる。

私は固まったまま、小さく頷いた。