「ど、どろぼ………!!」
「ストップ!!」
「ふがっ!」
今度は大きな手で、口を塞がれる。
「し--…、落ち着いて?何もしないから。話を聞いて欲しいだけ」
不覚にも、涙が浮かんだ。
やだもう…。
本当に怖い……!
ちょっと美形だからって、一瞬でも見惚れた自分が憎らしい。
ぎゅっ…と眼を閉じる。
そのまま。
二人して硬直したまま、膠着状態。
…しばらくして。
何にもされないことに気がついて、私は恐る恐る、眼だけで彼の顔を見る。
手で鼻と口を押さえられているから、息苦しくなってきたし。
本当に…綺麗な、顔。その美貌に、当惑した表情が浮かんでいる。
私は固まったまま、小さく頷いた。

