海に花、空に指先、地に霞





何事もなかったように。

今、足に水の感触があったのに……

濡れてさえ、いない……。


…不思議すぎる光景に、言葉も出ない。

ただわかったのは。

凪世が私の半身を抱えていること。
その、大きな…手。

気がついたら、私も凪世にしがみついていた。

苦笑しながら、それでも悠然とした顔で、凪世が私を覗き込む。

「びっくりしたでしょ。大丈夫?」

「ちょっと沙杏? あ~……だめだ、これ。焦点合ってないよ」

「花嫁殿、怪我はないか?」

かわるがわる、顔を覗き込まれて。

…やさしい声が、届く。

「な、んで……」

「ん? どっか痛い?」