何事もなかったように。
今、足に水の感触があったのに……
濡れてさえ、いない……。
…不思議すぎる光景に、言葉も出ない。
ただわかったのは。
凪世が私の半身を抱えていること。
その、大きな…手。
気がついたら、私も凪世にしがみついていた。
苦笑しながら、それでも悠然とした顔で、凪世が私を覗き込む。
「びっくりしたでしょ。大丈夫?」
「ちょっと沙杏? あ~……だめだ、これ。焦点合ってないよ」
「花嫁殿、怪我はないか?」
かわるがわる、顔を覗き込まれて。
…やさしい声が、届く。
「な、んで……」
「ん? どっか痛い?」

